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【兎×虎・空×虎】エアドール4

エアドール4ですw






  *






 バーナビーに告白をされ、1ヶ月弱が経過。
 世間はクリスマスのイベントを終え、年越しを迎えようとしていた。
 虎徹は変わらずカラオケ店でアルバイトを続けていて、バーナビーとも変わらずに【同じ職場の従業員】として付き合っている。
 あの日以来、バーナビーは虎徹に対する自分の気持ちを封じ込め、何も言ってくることはなくなり、接し方もいつもと変わらなかったので、虎徹も深く考えないようにしていた。
 けれど、考えないようにすればするほど、バーナビーが自分のことを諦めたのだろうかと思えば思うほど、虎徹はバーナビーのことを意識してしまって……。
 なんでこんなに心が揺らぐのだろうかと、ほとほと自分に嫌気がさしてくる。
 もしろんあれから何度かキースに抱かれたけれど……キースの性器をホールに受け入れ、激しく揺さぶられるほどに、悲しい気持ちがこみ上げて、キースに至極申し訳ない気持ちでいっぱいになって……。
 自分の気持ちを知らしめられているような気がして、虎徹は怖くて仕方がなかった。
 もちろん今も変わらずキースのことは好きだけど、それは大切にしてくれるキースに対する感謝の思いが強いような気がするのだ。
 自分は、バーナビーのことが、バーナビーと同じ想いで好きだということに、気付いてしまった。
 そんな現状が、虎徹には耐えきれない。
 時々、自分で空気をすべて抜いてしまいたいと思うことがある。
 空気を抜いて、風でどこかに飛ばされたら二人の前からいなくなれるのにと……。
 けれど、臍の吹き出し部分に手を伸ばし、結局抜く勇気がないのは、それでも二人と一緒にいたいと思うからだ。
 最低だ。
 二人の優しさに漬け込んで、自分を満たすために二人に甘えきっている。
 自分はエアドールとして欠陥品なのだと、つくづく実感させられる。
毎日毎日、二人の愛情を感じ、心を苦しめながら、悩む日々を送る虎徹。
 そんな中、突然呆気ない別れを体験するなど、バイト先から家路に向かう虎徹は、知る由もないのだった。





 虎徹がキースの家に帰ってくると、部屋から灯りが漏れていてひどく焦った。
 今日は、こんなに早く帰ってくる日ではなかったハズなのに。
 出掛ける際も帰ってくる時間を虎徹に伝えていたので、虎徹は余裕をもって帰ってきたつもりだったのだ。
 自分の、聞き間違えだったのだろうか。
 ともかく、ヤバい状態になってしまった。
 人間と同じサイズのエアドールが帰ってきたらなくなっていただなんて、空気でも抜かない限り常識から言って【空き巣】としか考えられない。
 大ごとになっていたら、ひどく面倒なことになってしまうが、今のところパトカーや人だかりは存在しない。
「…………」
 キースの部屋の明かりを見上げ、ハァと一つため息をもらす。
 一瞬、このままいなくなってしまおうかと考えて、その思いをすぐさま打ち消した。
 それだけは、決してやってはいけないことだとわかっている。
 キースを心配させるようなことは……。
 何を聞かれるだろう。
 どう答えればいいだろう。
 そんなことよりも、第一声は……?
 そんな風に色々と考え込んだところで、上手い言い訳なんて考えられるワケがない。
 虎徹は、ここまで来たらもうなるようになるしかないと、正直に心を持ってしまったと打ち明けようと決心し、静かに家の中に入っていった。
 しかし……。

『今、コーヒーを淹れるから、もう少しまっていてくれ、イワン』

「―――っ!」
 短い廊下を歩いている時に耳に届いたキースの言葉に、虎徹はビクリとカラダを戦慄かせた。
 初めて聞く、第三者の名前……。
 もしかして、新しい【生身】の恋人が出来たのだろうかと、そう思った瞬間、虎徹の心臓は動揺であり得ないくらいの早鐘を打ち鳴らし始める。
 みたいような、見たくないような、そんな心境。

 これを見た瞬間に、自分は捨てられてしまうかもしれない―――

 捨てられる。
 それは果たして、自分にとって都合の良いことなのか……。
 胸の辺りが異常な程に渦を巻き、ひどく息苦しくなる。
 意を決し、部屋の中を確認した虎徹は、信じられないものを目にするのだった。
「え……そ、れ……」
「っ!! こ……虎徹?!!」
 あり得ない場所から動いて現れたエアドールに、キースは信じられないものを見るように固まってしまった。
 けれど虎徹にはキースの反応よりも、今目に映し出された光景が信じられなくて……。
 そこに存在するのは、外ハネの金髪に藤色の瞳、肌は白く小柄な、自分とはまったく正反対のエアドールだったのだ。
 ジッと一点を見つめ、微動だにしないエアドールの目の前には、ショートケーキが二つならんでいる。
 これが、本来の自分の姿……。
 キースは、このコのことを『イワン』と呼んでいた。
 自分とは何もかも正反対のエアドールを再び購入し、キースはもう、
「俺が……必要、なくなったのか?」
「違う!!」
 呟いた虎徹の言葉に、キースは真っ先に否定した。
 けれど、そうとしか考えられなくて、虎徹はグッと顔に力を入れる。
 しかし、キースの口からは意外な言葉が発せられる。
「これは……虎徹が望んでいることだと思ったんだ」
「……え?」
 虎徹が望んでいること。
 何のことを言われてもいるのか、虎徹にはよくわからない。
 けれど、虎徹以上にキースの方が虎徹のことをわかっているようだった。
「なんとなくだけど……虎徹は、私のもとを巣立ちたいんじゃないかって……そんな風に思ったんだ。例えるなら『心ここにあらず』とでもいうのかな……虎徹は心がないはずなのに、何故そんなふうに思ってしまったのかわからなかったけれど、ようやく判明したよ。虎徹には、ちゃんと心があったんだね」
「っ……」
 まっすぐな笑みを浮かべすべてを見透かされ、虎徹は何も言い返せなくなってしまった。
 キースに捨てられると思った感情は、実は逆でキースが抱いていた感情だったのだ。
 虎徹は俯き、カラダの脇で握り拳を作る。
 心がモヤモヤする。
 それは、キースに一つ勘違いをされてしまっているから。
「俺は……ちゃんと……」
 ご主人様のことが、好きだ。
 その言葉は、キースによって遮られてしまった。
「知っている。そして、わかってるよ。虎徹がちゃんと、私のことを大切に想ってくれていることは……だから、私も虎徹が大切で、大好きだった。けれど……本当に好きな人が出来たんだろう? 虎徹」
「っ―――」
 キースに言われ、真っ先に青年の顔が思い浮かんだ。
 バーナビーの顔が……。
「私は虎徹を愛しているから、そんな虎徹を見ているのが辛かった。私は虎徹に本当に幸せになって欲しいと願っている。心を持っているのなら、尚更だ。虎徹が【それ】を望むのなら、私は引き止めないよ。けれど、私は独りではいられないから……君に黙って、こんなことをしてしまった。本当に、すまない」
「…………」
 感情がないはずのエアドールが、本心を見透かされ、持ち主を傷つけるだなんて……自分はどこまで愚かなのだろう。
 新しい金髪のエアドールの肩に触れるキースは、虎徹に旅立つキッカケを作るためにも、こんなことをしたのかもしれない。
「それ……誕生日?」
 イワンと呼ばれたエアドールの前にあるケーキに目を向け、虎徹は訪ねると、
「本当の誕生日はわからないけれど、せめてと思ってね。虎徹の時も、ケーキでお祝いしたよ」
 そう言って昔を思い浮かべ屈託なく笑みを浮かべるキースは、既に前に進んでいるのだと思った。
 虎徹とは違う道、このイワンとの新しい道を。
 心がチクチクと痛むのは、やっぱりキースのことが好きだから。
 けれど、二人を同時に好きになってしまった自分が招いたことであり、もしこのままキースと一緒に居続けたとしても、キースを傷付けるだけになってしまうから……。
 キースが虎徹の幸せを望んでくれるのなら、虎徹もキースの幸せを願わなければならない。
 その相手は自分ではなく、このコなのかもしれない。
 虎徹は、キースのもとを旅立つ時がきたのだ。
 バーナビーに、
『エアドールは今乱暴に扱われることが多くて、感情を表に吐き出せないストレスをエアドールにぶつけてしまうケースも少なくはないから、ボロボロになってスクラップされることがほとんどです。こんなに綺麗なエアドールは、そうあるものじゃない。本当に大切にされていたんですね』
 と、聞かされたことがある。
 すべてはキースのおかげ……。
「……俺たちは、ご主人様に大切にされた分だけ、心を持つ可能性があるって聞いた……俺は、間違いなくご主人様の愛情を感じることが出来たから、今こうして心を持っているんだ……心を持つことが出来て、俺は色んなものを見て、色んなことを知ることが出来た。本当にありがとう。そのコも、大切にしてやってほしい」
「もちろんだとも! 私も、虎徹の本当の幸せを願っているよ!」
「サヨウナラ、キース―――」
 虎徹がキースの名を初めて呼んだ。
 それは大切なご主人様との、本当の別れを意味する瞬間だった。
 とても淋しかったけれど、不思議と気持ちはスッキリとしていた。
 イワンにまったくの嫉妬を抱かないのかと言ったら、嘘になってしまうけれど、それでも【二人】には幸せになって欲しいと、虎徹は心から願うばかりだった。
 あのコも、キースの愛情を受けて、心を持つことができたら良いのにな、と……。



 周りから見たら、持ち主に捨てられた形になる虎徹のことを、果たしてバーナビーは受け入れてくれるのか……キースにはあんな風に頷いて見せたけれど、正直虎徹は不安だった。
 自分は他人のおさがりになる、エアドールなのだ…。
 それでも今の虎徹は、バーナビーのもとにしか自分の居場所はないのだ。
 この日は、カラオケ店で年越しを迎えると言っていた。

『大晦日はみんな二年参りにいくので、お客さんはそんなにこないんですが、ごく稀にいるんですよね。新年早々カラオケ、っていうお客さんが……どうせなら、虎徹さんと年越しを迎えたかったな……って、無理を言ってしまってすみません』

 あの時の、少しだけ複雑そうに歪んだ彼の笑みが、今でも目に浮かぶ。
 きっとバーナビーは自分を見捨てないだろうと信じているけれど、それでももしバーナビーが自分のことを受け入れてくれなかったら、自分で空気を抜いてしまおう。
 虎徹はそう覚悟を決めて、バーナビーがいるカラオケ店にへと向かうのだった。






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