スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【兎虎SS】 秘密の共有

突然ですが、6/26のイベントで配布したペーパーに記載した兎虎小説ですw
時間軸は、ルナティック出現前(5話後)辺りの感じで…。

『秘密の共有』



 この日の夜も、バーナビーはウロボロスのマークを記した紙一枚を手に、街を歩き回っていた。
 ほんの少しの手掛かりでもいい。足取りを捕まえることができれば、そこから広げていくことができるのに。
 シュテルンビルド街のどこを回っても、街のみんなは首を横に振るばかり。
 これだけの広い市街地で、アジトだってあるハズなのに、ちゃんとした組織のマークさえ持っている犯罪組織のことを誰も知らないだなんて、あり得るのだろうか。
 けれど、そのあり得ない話しが現実に起こっている。
 誰も知らない、現実―――
 唯一見つけた手掛かりである犯罪者も、精神を病み、命を経った。
 警視庁は、バーナビーの両親殺害も含め、何故かそれ以上のことを調べ上げようとはしなかった。
 二十年間、こんなにも必死に手掛かりを捜しているのに、組織名とマークまで知っていながら、どうしてまったくの情報を得ることが出来ないのか……。
 そして、幼かったとはいえ、何故自分の記憶は犯人の顔を思い出すことが出来ないのだろう……。
 途方もない月日を、二十年間過ごしてきた。
 これからも、この途方もない月日を積み重ねていくのだろうか……。
 そう思うと、至極やるせない思いがこみ上げる。

 諦めたワケではない。
 諦めたワケではないけれど、先が見えない現状は不安を覚えて、気が滅入ってくる。
 街行く人々に声を掛け、首を横に振られる度に、バーナビーの口からこぼれ落ちるのは、重たいため息ばかりで。
 この日も何度目になるかわからないため息を零し、最後に目の前のバーに立ち寄って、ここで誰も知らなかったら今日は諦めようと思い、入り口のドアを潜る。
 入り口付近にいた人から順を追って片っ端から声を掛け、ウロボロスのマークを見せていくが、やはり進展はなく。
 それでも諦めずに、すべての人に声を掛けようと店内を回っていると、バーナビーはカウンターで予想外の人を目撃するのだった。
 黒と白のハンチング帽を被った男と、アッシュブラウンの癖毛をオールバックにした巨大の男。
「センパイ……に、えっと……アントニオさん」
「ん? おォ、バニー! オマエがこんなとこにいるなんて、めずらしいな!」
「おォ。お疲れさん、バーナビー。わざわざ気ィ使ってくれて、サンキューな」
 そこにいたのは、虎徹と、アントニオだった。
 バーナビーが声を掛けると、意外そうに目を丸くした虎徹だったが、それは一瞬で、上機嫌に応えてくる。
 アントニオも、手にしていたウィスキーグラスを挨拶代わりに持ち上げてみせる。
 ちなみに『気を遣って』とは、この場でヒーロー名を告げなかったことに対する礼だろう。
「ちょっと街で……最後にココに立ち寄ってみたら、アナタ達がいて……まさか、こんなところで遭遇するとは思いませんでした」
 バーナビーの言葉に、虎徹の表情が俄かに堅くなる。
 それを、隣りの男に悟られないよう虎徹なりに気を遣ったのだろう。
 深いところまで、詮索はしてこない。
「ここは、俺たちの昔からの行き着けだからな。大体がココで飲んでる」
「あァ、そうだな。いつもコイツの失態話で盛り上がっている」
「んだよ、そりゃ。なんなら、オマエも隣りに座れよ。最後にココに来たってことは、今日はもう終了のつもりでいたんだろ?」
「えェ……まァ……」
 少し迷ったけれど、二人が手にするグラスを見ていたら、とてもアルコールを摂取したい衝動に刈られてしまった。
「今日は、コイツの奢りだからよ」
「はァ? なんだそりゃ。俺は、そんなこと一言も言ってねェぞ。そこはオマエがセンパイらしく、『今日は俺の奢りだからよ』って言う場面だろ。たまにはカッコ良く決めてみろっつーの」
「本気にすんなよ。猛牛マン。冗談が伝わらねェ男だなァ。なァ? バニー」
「アナタの場合、冗談に聞こえないところがありますから……」
「だよなァ?! ほら、言ったじゃねェか」
「何を言ったんだよ。バニーも、んなとこに突っ立ってねェで、早く座れよ」
「……じゃあ遠慮なく、オジサンの奢りでいただきます」
「はァ? 俺ァ、そんなこと言ってねェぞ!」
「小さいこと言ってんなよ、虎徹先輩……」
「そうですよ、小さいこと言わないでください」
「クッソォ〜。二人して、寄ってたかりやがって」
 ブツブツとふて腐れながら文句を口にする虎徹に、バーナビーはアントニオと目を合わせ肩を竦め合いながら、虎徹の隣りのカウンターに腰を沈めた。
 そんな風に平然を繕いながらも、バーナビーは内心言い知れぬ一つの感情を隠していた。

 親友の二人だからこそ、放つことが出来る二人だけのオーラに、至極つまらないと思えた、子供じみた感情。

 高校生以来の付き合いだという二人は、十年以来の付き合いということになる。
 ツーカーの仲とよく言うけれど、おそらく二人の中では言葉にせずとも分かり合える深い絆のようなものがあるように思えるのだ。
 出逢ってまだ数ヶ月にしかならないバーナビーには、到底入り込むことの出来ない、大人の二人が放つオーラが、そこにはある。
 それが何故だかバーナビーには悔しく思えて、やるせなかった。
 アントニオは、後先考えずに突っ走る虎徹のことを、いつも心配そうに見守っている。
 今虎徹が、暴走しがちのバーナビーのストッパー役になっているように、かつてのアントニオが、虎徹のストッパーになっていたのかも知れない。
「また、情報を得ることが出来なかったのか?」
 注文したアルコールを差し出され、みんなで軽く乾杯をし、一口それを含んでみたが、どうやら無意識にため息を漏らしていたようで。
 今日も成果が得られなかったことを虎徹に悟られてしまったようで、虎徹が神妙な面持ちで問いかけてくる。
 バーナビーにとって今のため息は、成果を得られなかったことに対するものなのか、それとも……。
「……えェ。まァいつものことですし、仕方がないですね」
 だからバーナビーは、虎徹にそう思われていることを口実に、苦笑いを浮かべる。
「もし、俺も手伝えるようなことがあれば、遠慮なく言ってくれよ?」
「ありがとうございます。でも、大丈夫ですから」
「オイオイ、何だよ一体。二人だけの秘密ってやつかァ? 俺にも教えろよ」
 主語を省いた、二人だけにしかわからない会話に、アントニオが冗談混じりにつまらなそうな声をもらす。
「そうだな。誰も知らない、俺達だけの秘密の話しだ。なァ? バニー」
 アントニオの反応を面白がるように、突然虎徹がバーナビーの肩に腕を回してきて、バーナビーは何故かギクリと胸を弾ませる。
 心の準備もなく、唐突に虎徹の顔が近付いて来たから、らしくもなく焦ってしまったのだ。
 よく見ると、精悍な顔だと思う……。
 なんて数秒見つめてしまった自分に、胸中頭を横に振り、バーナビーは虎徹の腕を鬱陶しいとばかりに退かして、鼻で笑ってみせた。
「何言ってるんですか。ファイヤーエンブレムさんも知っていることですよ」
「ハハハッ。そうでした~」
 おちゃらける虎徹に、ドッとため息。
「何だよ、じゃあ俺にも教えてくれたった良いじゃねェか」
「別に、教えなくても良いことだろ?」
 やはりバーナビーに気を遣ってか、あくまで教えるつもりはないらしい虎徹に、ブーブー文句が止まらないアントニオ。
 こういうところは、虎徹のさりげない優しさだと、バーナビーは思う。

(二人だけの秘密なら、他にあるんだけどな……)

 少しずつ、少しずつ、虎徹とバーナビー、二人の距離は縮まっているのはたしかだ。
 バーナビーがいつ、虎徹のことを気にするようになったのかはわからない。
 なんとなく、バーナビーの誕生日はキッカケになっていたようにも思う。
 互いに、それらしい想いを言葉で伝えたことはないけれど、なーなーで何となく……だけは嫌だったので、ちゃんと求めたのはバーナビーの方だった。
 受け入れてもらえるなど、微塵も思っていなかったけれど、それを裏切り、虎徹はバーナビーを受け入れた。
 自分のカラダを、開いて……。
 それが、二人だけの秘密。
「なァ、バニー。あそこ見てみろよ」
「!! ……え?」
 変なことを考えている最中に虎徹に声を掛けられ、バーナビーはひどく驚いてしまった。
 言われるままに虎徹が指差す方を見やれば、別段気にしているワケでもない虎徹が、言葉を続ける。
 虎徹が指差す方向にあるのは、ステージの上で弾き語りしているシンガーだ。
「あれ、ブルーローズだぞ。すげェよな」
「え……あ……ホントだ……」
 可憐にピアノを弾き、とても良い笑顔で歌い上げる、カリーナの姿。
「アイツ、ホントに歌が好きなんだろうな。良い顔して歌ってる。ヒーローと天秤に掛けたくらいだもんな……」
「…………」
 この人は気付いているかわからないけれど、バーナビーにはこの短時間でわかった。
 カリーナは、何度も何度も虎徹の方を見ている。まるで、虎徹のために歌っているかのように……。
 これも、虎徹とカリーナだけが持つ、秘密の共有だろう。
 鈍いこの人に意識はないかもしれないが、カリーナはおそらくそう思っている。
 バーナビーは今、気付かされてしまった。
 虎徹は誰のモノでもない。
 虎徹を慕う、みんなのものだと……。
 カラダを繋げただけで自分のモノだと思い上がっていた自分が、至極恥ずかしい。
 けれど。

 それでも、バーナビーは虎徹を独り占めにしたいと思っている―――

 ヒーローとしてのパートナーではなく、一人の人間として……。
「……スミマセン。ちょっと、お手洗いに行ってきます」
 自分の馬鹿げた感情がいたたまれなくなり、少し頭を冷やしたくて、バーナビーは静かに立ち上がるとまっすぐと男子トイレへ向かった。
「…………俺も、連れショ~ン」
「あ、おいっ!」
 その後を、虎徹がついて行ったことも知らずに。
「あれ? 今ここにバーナビーいなかった? タイガーもいないじゃない」
「あー。二人で便所に行ったよ。連れションだと」
「は? 何よ、それ」
「普通二人もいて、独りになんてしねェよな。ったく、虎徹の野郎……」
 出番を終えて降りてきたカリーナに、アントニオは大きなため息を一つ吐いてみせた。





「何やってんだろう……」
 鏡の中に映るパッとしない自分の顔を見つめ、やりきれない思いを呟く。
 一体自分はどうしてしまったのか……今までこんな感情を一度だって抱いたことがなかったから、正直バーナビーは戸惑っていた。
 どんどん膨れ上がっていく感情を、どう抑えればいいのか、わからずにいた。
 水を強く出したまま鏡を見つめていると、入り口の扉が開き、いけないと思って蛇口を捻り、その場を避けようとする。
 すると、耳に届いたその声に驚き、バーナビーは入り口へ振り向いた。
「何してんだ? ションベンじゃなかったのか?」
 その声に敏感に反応してしまったが、よく考えると随分と下品な言葉で、バーナビーは途端に眉間にシワを寄せてみせる。
「アナタこそ、何しに来たんですか?」
「俺か? オマエ、便所に来たっつったら、そりゃションベンしかないだろ」
 問いを問いで返せば、再び身も蓋もない言葉。
 でも。
 一瞬で、滅入ってる気持ちが晴れてしまったのだから……狙っているのかはわからないが、本当に不思議な人だと思う。
 バーナビーの背後を通り過ぎていき、男子便器の前に立つと、本当に用を足し始めようとする虎徹。
 バーナビーは何故か突然無性に虎徹を抱きしめたい衝動に刈られ、虎徹の腕を掴むと、個室に連れ込んで扉の鍵を閉めた。
「おおおっ?! 何してんだ、バニー!!」
 当然ながら、かなりビックリしている虎徹の躰を後ろから抱きすくめ、蓋の締めてある便座にそのまま座ってしまう。自分の膝の上に、虎徹が座るような体勢。
 虎徹の存在を腕の中で確認して、性急に感情が膨れ上がったバーナビーの腕に、自然と力がこもる。
 ギュッと、強く抱きしめて……。
「どうした? バニー。何か、あったのか?」
 らしくないバーナビーの行動に、心配そうに声を掛けてくる虎徹。
 バーナビーは虎徹の背に摺り寄せるように首を横に振って、更に腕に力を込めた。
「無性に、こうしたくなっただけです……すみません。迷惑ですよね」
「んなことねェよ。オマエが気が済むまで、そうしてれば良い……んだが、重くねェか?」
 真面目に答えたかと思えば、次の瞬間これだ。
 それがすごく虎徹らしくて、バーナビーは思わず笑ってしまう。
 そして……。
「僕は……アナタにとって【みんな】の中の【一人】なんですよね……」
「は? どういうことだ?」
 唐突のバーナビーの問いを理解できなかったようで、虎徹はお馴染みの素っ頓狂な声を出すが、
「いえ……僕は、アナタの【特別】にはなれないのかって思って……」
 正直に今の思いを言葉にすれば、一瞬不思議そうな表情を浮かべた虎徹は、フッと優しげな笑みを浮かべて、答えてくれるのだった。
「オマエは俺にとって、娘以外に唯一の特別な存在だから、安心しろ」
「……その言葉、信じても良いですか?」
「言葉だけじゃ、足りねェか? なんなら、ココでスるってのも、アリだぜ?」
「本気にしますよ? それ」
 躰を捩って振り返り、意地悪そうに笑みを浮かべ虎徹に、バーナビーも不敵な笑みを返して見せる。
 その時、
「お~い、虎徹~? バーナビー? ブルーローズが痺れ切らしてるぞ!」
 突然アントニオの声が聞こえてきて、一瞬躰をビクつかせたバーナビーだったが、不意に虎徹がバーナビーの唇に人差し指を押し付けてくる。
「?!!」
 そして、次の瞬間、
 重なってきた虎徹の唇に、さすがのバーナビーも目を見開き驚いてしまった。
 けれど、
「あれ? いねェのか? あの二人、どこ行っちまったんだよ、ったく……」
 アントニオの声にハラハラドキドキと胸を爆つかせながら、二人は悪戯っ子のように笑みを浮かべ、何度も何度も角度を変えて接吻あうのだった。



 また一つ増えた、二人の秘密の共有を楽しんで。



*終*



最後まで読んでくださり、ありがとうございました!!


スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント :

プロフィール

眼鏡帽子屋*くー

Author:眼鏡帽子屋*くー
こちらはT&B 兎虎、右虎徹小説メイン、同人情報サイトです。腐向けですので、苦手な方男性の方18歳未満の方はご退出くださいませ。なお、関係者とは一切関係ありません。

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。