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【兎×虎、空×虎】エアドール3

エアドール3です。
ついにあの場面が!←見たことがある人しか分からない…





   *





「虎徹さん、コレをそこに付けてくれますか?」
「おォ」
 バーナビーに飾りを手渡され、脚立に乗って作業をしていた虎徹はそれを受け取り、壁に貼り付けていく。
 この日は、バーナビーと共に普段よりも早めに出勤し、【ハロウィン】から【クリスマス】という行事に向けて、店内ロビーの飾り付けをしていた。
 どんどん明るく綺麗になっていく店内に、虎徹も楽しくてノリノリの気分である。
 先ほどまでは、クリスマスツリーに飾り付けをしていた。
 大きな作り物のモミの木に小物やキラキラしたモールと電飾を巻き付け、白いワタを散りばめ、てっぺんに星を乗せる。
 ライトオンすると、色んな色に点滅するそれに、虎徹のテンションは一気に上昇した。
 こうして綺麗なモノを見ていると、もやもやした気持ちを忘れることができる。
 初めてキースの家を出て見上げた太陽の眩しさも、ショーウインドウも、とてもワクワクして、もやもやなんてまったくなかった。
 そんな気持ちを、虎徹は最近忘れていたように思う。
 だから虎徹は、この時間が楽しくて仕方がなかった。
「あれ? ないな……虎徹さん、材料が足りないので、倉庫に取りに行ってきますね」
「おォ」
「じゃあ、これもお願いします」
「おォ」
 虎徹に赤と緑の大きなモールを預け、バーナビーはカウンター裏の方にいなくなる。
 虎徹が小気味良く鼻歌を歌いながら、バーナビーから受け取ったモールを壁の上の方に飾り付けていた、その時だった。
「ぅわっ!」
 少しバランスを崩した虎徹は、慌てて壁に腕を付きバランスを保とうとしたのだが、たまたま飛び出していた残り釘に突き刺してしまった。
 シューッ!! と大きな音を立てて空気が抜けていき、そのまま虎徹はどさりと脚立から崩れ落ちる。
「ぁっ……ぁっ……」
 空気が勢いよく抜けていく穴の開いた腕が右往左往に暴れ、立てた膝も力が保てずへたりと倒れてしまう。
「虎徹さんっ、どうかしましたか?!!」
「ぁっ……」
「!!」
 大きな物音に慌てて戻ってきたバーナビーの目が、驚きに見開らかれる。
 明らかに人間ではない、その姿。
「虎徹さん?!!」
「ぁっ……み、るな……た、のむ……みるな……」
 決して、バーナビーに知られては行けない、ビニールとシリコンで出来た自分の本当の姿。
 意識さえ保てなくなる中、ただただ見られたくなくて、虎徹は必死に懇願する。
 しかし、バーナビーは虎徹の願いを聞いてくれないどころか、カウンターに置いてあったセロハンテープを手に取ると、すぐさま駆け寄り、虎徹の穴の開いた腕にテープを貼って。
 そして全身をまさぐり始める。
「何処ですか、虎徹さん!」
「……え?」
 始め、何を言われているのかわからなかった。
「早くっ! 吹き出し口は何処ですか?!!」
「ぁっ……」
 答えることよりも、なんでそんなことを知っているんだろうと、ぼやける意識の中で考える。
 バーナビーは虎徹のエプロンを捲り上げ、ベストとシャツのボタンとスラックスのベルトを外し、下腹部を晒した。
 臍の部分に存在する吹き出し口を自ら見つけだすと、バーナビーは躊躇いなく吹き出し口を外し、口を付けて息を吹き込んだ。
「ぁっ……、ハッ……」
 ふーっ、ふーっ、とバーナビーの息が体内に吹き込まれるたびに、何故か虎徹は下腹部から頭のてっぺんに向かって掛けぬける、言いようのない感覚にゾクゾクと震え上がり、熱い吐息を零した。
「ハッ、ぁっ、ぁっ……」
 何も感じないハズの【空気】の性器がジンジンと疼き、口の端から、何かが溢れ出しそうな感覚に捕らわれる。
 バーナビーの髪を、空気が入り始めた覚束ない手でまさぐり、空気がしっかりと入り込んだ時には、虎徹は別の意味で立ち上がれず、くたりと弛緩してしまった。
「大丈夫ですか? 虎徹さん……」
 臍に吹き出し口が戻され、バーナビーが虎徹の様子を伺うように顔をのぞき込んできた瞬間、虎徹はバーナビーの体に強く抱きついていた。
「虎徹さん……?」
 戸惑うようなバーナビーの声が、直接鼓膜に響くような、そんな二人の距離。
 考えるよりも先に、体が勝手に動いていた。
「ハァ……ハァ……バニー、ちゃん……どうして……」
「……すみません……僕、あなたが【エアドール】だって、気付いてたんです……」
 主語を省いた虎徹の問いに、バーナビーの衝撃的な告白。
 でも、虎徹は何故か驚かなかった。
 きっと、心のどこかでそうなんじゃないだろうかと、気付いていたのかもしれない。
 けれど、
「なんで……気付いたんだ?」
 懸命に【人間】のフリをしてきた。
 もしかしたら、他の人に気付かれていたのだろうかと不安に思ったけれど、バーナビーの言葉は意外なものだった。
「あなた……エアドールの中でも精密で質の良い、最高品として有名な【マーベリック社】のモノでしたから……特徴があるんです。まさかとは思って、あなたがここに働き始めた時にこっそり確認させてもらいましたが、首の後ろにマーベリック社のマークがあったので、確信しました」
「マーク?」
 そう言われ、思い出す。
 初めての日、エプロンをつけてあげます、と言われてバーナビーは虎徹の背後でエプロンを結んでくれた。
 その際、髪の毛を押さえててくれと頼まれ、虎徹は後ろ髪をかき上げ押さえたのだ。
 おそらくそのときに、たしかめたのだろう。
 自分の首の後ろなんて特別興味があるわけじゃないから、そんなマークが自分に刻まれていることを初めて知った。
「マーベリック社の原型は、ウチの両親が一からスタートさせた小さなビクスドール店でした。とても精巧な作りで、口コミで広がり人気も出て、そろそろ軌道に乗り始めるかってころ、両親は交通事故で亡くなってしまいました。それから、自分が会社を引き継ぐと言い出したのが、叔父のマーベリックだったんです」
 乱れた虎徹の衣類を直し、ロビーのソファーに移動し、自分のプライベートを初めて話し始めるバーナビー。
 虎徹はそれを静かに聞き入った。
「けれど叔父は、基盤の整ったブルックス社を乗っ取り、マーベリック社と社名変更し、ビクスドールから今のエアドール製造社に変えたんです。内向的な男性が増えている時世に、その方が需要があると判断したんでしょう……両親が亡くなって僕は叔父に引き取られ、叔父は僕を後継者にしたかったようですが、僕はその気になれなくて、反発の意味からちゃんとした企業にも入らず、たまたま通りかかったここで働くようになったんです」
「……エアドールを作るのが、嫌だったのか?」
 静かに聞いていた虎徹だったが、何故かその言葉に引っかかり、バーナビーの言葉を制してしまった。
 エアドールを否定されたような気がして、心に痛みを伴ったのだ。
 虎徹の気持ちを察したバーナビーが、慌てて首を横に振る。
「違います、虎徹さん! すみません、誤解を招くような言い方をしてしまって……僕は、両親のしてきたことを容易く無にしてしまった叔父が、どうしても許せなかったんです……決して、あなた方の存在を否定しているワケではありません。それならば、初めからあなたを避けていますから……」
「……信じて、良いのか?」
 必死に訴えてくるバーナビーに偽りがないことは、なんとなくわかる。
 おそらく、嘘がつけないタイプじゃないだろうかと……。
 でも痛みが拭えずに、どうしても確かめるような聞き方をしてしまう。
「……男性用の男性型エアドールが作られるようになったのは、この二~三年からなんです。極稀に、エアドールが心を持ってしまうことがあることも、叔父から聞いていました。それは、持ち主にとても大切にされたエアドールに見られる傾向らしいんです。どこか躊躇うようなしゃべり方と、家を初めて外出したという言葉に、僕はあなたがエアドールだということにすぐ気付きました。それと同時に、持ち主にとても大切にされているのだと思ったら、凄くつまらない気持ちがこみ上げて……」
「え……?」
 何気なくバーナビーの口から零れ落ちた言葉に、虎徹は耳を疑った。
 まっすぐとこちらを見つめるバーナビーが、迷いなく自分の想いを打ち明ける。
「僕は、すべてのものに対して興味を示し、キラキラと瞳を輝かせているあなたに、一目惚れをしたんです。僕の中で、初めてエアドールに対する感情が変わった瞬間でもあったけれど……でもそれ以上に、虎徹さんという存在に、僕は心を奪われたんです。出来るならば、奪ってしまいたかった。でもエアドールは持ち主が手放さない限り、奪い去るなど決して赦されないことだから……心を持つほど大切にされているあなたを、持ち主が手放すなんてあり得ないとわかっていたから、だからせめて近くにいられるならばと、あなたをこの店に勧誘した。すべて、僕の身勝手なエゴで虎徹さんをつなぎ止め、こんな目にまで合わせてしまった……本当にすみません、虎徹さん……」
「……バニーちゃん……」
 傷付いた虎徹の腕を手に取り、握り締めながら、至極苦しそうな表情を浮かべ俯いてしまったバーナビーに、虎徹はなんて答えればよいのかわからなかった。
 バーナビーを見ていると、握りしめられた腕から、彼の気持ちがダイレクトに流れ込んでくるみたいで……。
「手に……入らないとわかっているモノを……人はどうしてこんなにも、欲しいと思ってしまうんでしょうか……」
「…………」
 そんなことを言われても、エアドールの虎徹にはわからない。
「あなたが……欲しいんです、虎徹さん……」
「っ……」
 そんなこと……言わないで欲しい。
 そんなことを言われたら、虎徹は迷ってしまうから……。
「……すみません、困らせてしまって……わかっています、あなたが持ち主のモノだってことは。あなたが持ち主を愛していることも。もう二度と言いませんから、そんな泣き出しそうな顔しないでください、虎徹さん」
「……泣く……?」
 バーナビーが何かに耐えるように顔を顰めながら、虎徹の手をギュッと握りしめてくる。
 虎徹には【泣く】ということがどういうことなのかよくわからなかったけれど、ただ、ただ……胸の辺りが苦しくて、仕方がなかった。
 以前にも、こんなことがあった。
 バーナビーとキースのことを考えて、息苦しくなって、鼻の奥がツンと痛くなったことが……。
 それと一緒だ。
 バーナビーに、そんな風に想われてしまったら……虎徹は本当にどうすればよいのかわからなくなる。

(どうして……どうして俺なんかのことを、気にするんだよ……ただの人形なのに……)

 どうせなら、嫌われた方がよほども楽なのかもしれない……そんな風に考えて、虎徹は心の中で首を横に振った。
 やっぱりバーナビーに嫌われるのは、嫌だから……。
 ずっと大切にしてきてくれたキースを、虎徹は決して裏切れない。
 けれど、

(バニーちゃんとも、同じくらい一緒にいてェよ……)

 無意識に、バーナビーの手を握り返そうとしたその時。
 不意にバーナビーの手が離れていき、虎徹はハッと我に返った。
 店長が来たのだ。
「お、なんだ? 二人で寛いで……まだ飾りが途中じゃないか」
「スミマセン、虎徹さんが手を切ってしまったので、手当てをしていました。すぐに済ませてしまいますね。虎徹さんは休んでいてください」
 すっくと立ち上がり、虎徹に笑みを浮かべていったバーナビーに、なんだか寂しい気持ちがこみ上げる。
 離れていったこともそうだが、今のバーナビーの笑みが初めて出逢ったときに見せた、感情が一切感じられない笑みに見えたから……。
「いやっ、こんなの平気だっ」
 虎徹は再び襲われたモヤモヤを紛らわすように勢いよく立ち上がると、バーナビーと視線を合わせないまま、先ほどまで作業をしていた脚立の上に登った。
「なんだなんだ? よそよそしいなァ……」
 二人のぎこちない態度に首を傾げながら、店長はスタッフルームへと消えていく。
 無言の店内に、有線の冬のラブソングが場違いに明るく流れている。
「…………」
 自分の作業を進めているバーナビーの視線が、背中に感じられる。
 虎徹は、その視線を感じるだけで、何故かカラダが熱くなるのを感じていた。
 自分を落ち着かせるために、何度も何度も小さく深呼吸をする。
 自分は、バーナビーにどうされたいのだろう。
 バーナビーは、自分をどうしたいのだろう。

 セックスをしたいのだろうか……。

 よく、わからない。
 虎徹は所詮、セックスで感じることができない。
 バーナビーだってそのことは知っているはず。
 二人にとってそれは、意味のあることなのだろうか……。
 性欲処理のエアドールである虎徹には、それが意味のあることだとはとても思えないのだ。
 虎徹は、それが悲しくて仕方がなかった。

 強い感情が溢れ出しそうになる。
 それが虎徹にはなんなのか未だにわからない。
 でも、これが先ほどバーナビーが言っていた【泣く】ということなんだろうかと、なんとなく思った。



 俺は、どうすればいいんだろう……。
 苦しくて、苦しくて、鼻の奥が痛い―――





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Author:眼鏡帽子屋*くー
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