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【兎×虎、空×虎】エアドール2

遅ればせながら、エアドールの続きになります。
既にすべてを書き上げましたが、前回3回と言っておきながら、区切りいいところにすると長くなっちゃうので、少し小分けでアプします;;;

悩める虎徹さんです><






  *





 キースに内緒でカラオケ屋でバイトを初めて1ヶ月。
 飲み込みの早い虎徹は、仕事がだいぶ板についてきた。
 オーダーを受けて、店長が作ったものを運んだり、使用後の部屋の片付けをしたり、洗い物をしたり……。
 洗い物は始めドキドキだったけれど、なんとか大丈夫だったので、一安心。
 オーダーを取るのも最初はワケがわからなかったけれど、バーナビーが丁寧に教えてくれたので、今は平気になってきた。
 たまに理不尽な苦情を言われたり、絡まれたりするときもあるけれど、深く考えていない虎徹的には笑顔でやり過ごすので、これといった問題も起きていない。
 バーナビーは、
「夜は飲む人が増えるから、昼間よりも質の悪い人が増えるんですよね」
 と言っていた。

 そんなこんなで過ぎた1ヶ月。
 この日はバーナビーと仕事を休んで、二人で出掛けていた。
 虎徹が普通に出勤すると、突然バーナビーに、
「行きますよ、虎徹さん」
 と言われ、連れ出されたのだ。
 どうやら、あらかじめバーナビーが店長に許可をもらっていたらしい。
 仕事中からひとつひとつに用意周到で、ブレがなくしっかりしているので、虎徹はいつも自分には真似できないと思いながら彼のことを見ている。
 虎徹は基本的には適当なので、正直疲れないかなぁと思うのだが、多分疲れないのだろう。
 この日も色々と予定を組んで、虎徹を車で様々な所に連れて行ってくれ、最後にはレストランで少し早めのディナーを。
 レストランにくるのも初めてだったので、虎徹はワクワクだ。
 ただ、周囲にジロジロと見られているのは、何故だろう……と、虎徹もチラチラと周りを横目で見ながら、バーナビーにこっそりと訪ねてみる。
「なァなァ、バニーちゃん……なんでみんな、こっちを見てるんだ?」
「え……あァ……」
 訪ねると、バーナビーはすぐに理解したようで、肩を竦めながら答えてくれる。
「僕達が、男同士だからじゃないですか?」
「男同士……だと、ダメなのか?」
 それの何が気になるのか、虎徹には理解できない。
 虎徹は普段からずっとキースと一緒にいたし、今の職場も男率が高いので、男同士でいることが当たり前である。
 問い返せば、バーナビーは頬杖を付きながら虎徹を見つめ、笑みを浮かべてみせる。
「僕達が【ゲイ】に見えるんじゃないですかね?」
「ゲイ……?」
 また、聞いたことがない単語を耳にし、虎徹は更に首を傾げる。
「あなたは、気にしなくても良いですよ。あー言うのは、無視するのが一番ですから……さ、料理も来たことですし、冷めないウチに食べてしまいましょう」
 再び笑みを浮かべるバーナビーに、虎徹はなんとなく不思議な感覚に陥った。
 先ほど笑みを浮かべた時は、眼鏡の奥の瞳がまったく笑ってない感覚がしたのだが、今は心から笑っているような気がして……。
 本当にふしぎな男だと虎徹は実感する。
 そこが、虎徹がバーナビーに興味を抱く、一番の理由かもしれない。
「じゃあ、気にしないにする」
 と虎徹も笑みを浮かべて返事し、いただきますをして早速目の前に出された前菜にフォークを刺す。
 しかし、ちょうどその時。
 突然店内の明かりが消えると、落ち着いたジャズの音楽が途切れ、変わりにとても単調なピアノの伴奏が店内に流れ出す。
 何事かと思い周囲を見渡すと、みんなが示し合わせたように歌を歌い出し、若い男女のカップルの女性の目の前にロウソクが立てられたケーキが運ばれて。
「あれ……なんだ?」
 興味が湧いて、一度バーナビーに視線を戻し問えば、バーナビーは興味なさそうな表情を浮かべながら、
「誕生日です」
 と答える。
「誕生日?」
 再びカップルのテーブルに視線を渡し、一連の流れを傍観する。
 信じられないというような表情を浮かべる女性が、周囲の歌が終わるとロウソクの火を吹き消し、すると今度は拍手が沸き起こる。
 ありがとう彼を見つめ礼を口にする彼女の瞳には、涙が滲んでいて。
 それだけで虎徹にも幸せな気持ちが伝わってきて、自然と笑みが浮かぶ。
 しかし、
「虎徹さんの誕生日は、いつですか?」
「え……?」
 バーナビーの言葉に、虎徹の表情はすぐに曇ってしまった。
 反面、先ほどまで興味なさそうな顔をしていたバーナビーは、真逆の表情を浮かべている。
 けれど、虎徹には答えられない。
 誕生の日だから、生まれた日なのだろうと理解は出来たけれど、自分が生まれた日なんて虎徹にわかるハズがないではないか。

 虎徹は所詮、エアドールなのだから……。

 強いて言えば製造された日になるのだろうが、虎徹がそんなこと覚えているワケがない。
「……バニーちゃんは、いつなんだ?」
 だから、虎徹は自分の話題を逸らした。
 知らないなんて、言えない。
「僕ですか……僕は10月30日ですが……」
「そっか……じゃあ、その日は俺がバニーちゃんに【あれ】やってやるな」
 そう言って笑みを浮かべてみせたけれど、自分でも顔が強ばっているのがわかった。
「……虎徹さん、平気ですか?」
「え……あ、おォ」
 自分のことは言いたくないと理解してくれたのか、バーナビーはそれ以上詮索はしてこなかったけれど、虎徹の様子がおかしいは明らかで。
 心配そうに声を掛けてきたバーナビーに、笑みを返して見せたが、なんとなく虎徹の心の中に寂しさのようなものは消えることはなかった。
 自分にも、誕生日というものが欲しい。
 キースに聞くことが出来たならば、教えてくれるだろうか……。
 そんなこと、出来るワケがない。
 虎徹はキースにとって、心を持たないエアドールなのだから……。
 キースにとって、今のように笑顔を浮かべる虎徹は、存在しない―――
 それもそれで少し寂しく思ってしまうことすら、本当は赦されないこと……。
 虎徹は、自分を大切にしてくれるキースが好きである。
 出来たら、その気持ちを返してやりたいと思うけれど、キースが自分のことを【エアドール】としてどんな理由で購入したかわからない。
 果たして、性欲処理の存在でしかないのか……。
 それが、虎徹は哀しい。
「…………」
 そう考えた時、虎徹はツキツキと胸の辺りに痛みを覚えた。

(俺は、こいつのことをキースの代わりにしようとしているのか……?)

 自分に興味を持ってくれたこの青年を、キースにぶつけることができない【代用品】にしているんだろうか……。
 それじゃあ、エアドールと変わらない。
 そんなのは、絶対によくない。
 そもそも、バーナビーは虎徹のどこに興味を持ったのだろうか。

 興味がなくなれば、さっきのような無表情を向けられてしまうのだろうか……。

 虎徹の中でどんどん混乱して、ぐちゃぐちゃと何が何だかわからなくなって、考えられなくなってくる。
「虎徹さん……どうかしましたか?」
「え……?」
 不意に声を掛けられ、虎徹はハッと我に返る。
 急に黙り込んでしまった虎徹に、至極心配そうな表情でこちらを見つめるバーナビーに、ズキズキと胸が苦しくなって、虎徹は何かに耐えるように目の辺りに力を込めた。
 なんだろう、この苦しい気持ちは……。
 こんな気持ちは初めてで、虎徹はひどく戸惑った。
 この青年のことを考えると、胸の辺りが苦しくなって、痛くなって、いっぱいになって、何かが溢れ出しそうになってしまう。
 それが何なのか、虎徹にはわからなくて……。
「……ゴメンな、バニーちゃん……俺、もうそろそろ帰らないと……」
「え……もうそんな時間になっちゃいましたか? すみません、気付かなくて……」
「いや……俺の方こそ……せっかく連れてきてくれたのに、ゴメン……」
 今はバーナビーと一緒にいるのが辛くなってきて、こっちが言い訳を付けて帰りたいと思っただけなのに、逆に気を使わせてしまい、すごく申し訳ない気持ちがこみ上げ、余計に辛くなってくる。
 
(なんで……俺に優しいんだ? バニーちゃん……)

 結局目の前に出された料理に一口も口に運ぶことなく、バーナビーが店員に『急用ができたので、すみません』と謝る姿を見ているのも申し訳なく思えてしまった虎徹。
 送ると言うバーナビーを断ってタクシーで帰ってきた虎徹が、今日の出来事を思い浮かべベッドの前で立ち尽くしていると、しばらくして早めにキースが帰ってきて、虎徹は慌てて服を全部脱ぎ捨てベッドに入った。
「虎徹、ただいま!」
「…………」
 部屋に入ってきて早々、キースはベッドヘッドに寄りかかった虎徹の傍まで駆け寄ると、虎徹の存在をたしかめるように頬に触れてくる。
「こんなに冷えてしまって……寒い部屋に独りにしてしまって、本当にすまない」
「っ……」
 そう言って、申し訳なさそうに眉尻を下げ、虎徹のカラダを抱きしめるキースに、虎徹はバーナビーと一緒にいたときと同じような胸の痛みを覚えた。
 外から帰ってきたばかりだから、肌が冷たくなっているだけなのに、キースに余計な心配をさせてしまっている自分が、何だか赦せない。
 キースの体だって、帰ってきたばかりで同じくらい肌が冷たい。
 でも、キースに抱きしめられたところから、徐々に温かさが広がっていく。
 それがキースの心を表しているようで、余計に胸が苦しい。
 なんで、キースもバーナビーも、人形の自分にこんなに優しくしてくれるのだろう。
 自分はただのエアドールなのに、持ってはならない心を持ってしまった。
 その所為でキースが好きなはずなのに、多分バーナビーにも同じような感情を持ってしまって、キースを裏切っている。
 そして、【誰かのモノ】だと正直に言えなくて、バーナビーも裏切っている。
 自分が冒険だといって、キースの家をでなければ、こんなことにはならなかったのだ。
 後戻りが出来ない事態を、自ら招いてしまった。

 なんて愚かなことをしてしまったのだろう……。

「すまない、虎徹……帰ってきたばかりで申し訳ないけれど、今すぐ君を抱いていいだろうか……虎徹……」
 返事など帰ってこないとわかっていて謝るキースの唇が、虎徹の唇に重ねられる。
 ペロリと舐め上げられ、そのまま裸の肌に、上から順を辿って接吻けられていく。
 密着するキースの髪の毛から、少しだけ煤のにおいがした。
 今日も出動をしたのだろうが、あるいは救助に失敗し人が亡くなってしまったのかもしれない。
 そんな時、キースは不甲斐ない自分を紛らわすために、虎徹を抱くのだ。
 普段は良く口にする優しい言葉も忘れ、ただひたすら虎徹に『すまない』と繰り返して。
 辛そうな表情を浮かべながら抱かれると、虎徹も辛い気持ちがこみ上げる。
 けれど今のこの辛い気持ちは、それだけではないような気がする。

『虎徹さんの誕生日はいつですか?』

 セックスの最中に思い浮かんでしまった、バーナビーの顔。
 なぜ……自分は、キースのことが好きなハズなのに……。

(俺は……俺は……)

 最低な己が、心の底から赦せない。
 こんなに色んな感情が渦巻いているのに、セックスは決して気持ちよくなることが出来ない、哀れな自分も。
 何故、エアドールは【イク】ことも赦されず、感じることすら赦されないのだろう……。

(ゴメン……ゴメンな、ご主人様……俺、エアドールなのに、ご主人様を全然満足させられていないよな。こんなの、エアドール失格だよな……)

 でも、でも……。

(ゴメン)

 俺は、好きになってはいけない人を、好きになってはしまったんだ。
 決して、感情を持つことを赦されていないのに。
 人形が、二人の男を同時に好きになってしまった。

「虎徹……虎徹っ」

(ゴメン……ゴメン……)

 キースに名前を呼ばれるたび、胸が苦しくて、苦しくて……。
 何かが溢れ出しそうなのに、溢れ出すことができないそれが何んなのか、虎徹にはわからない。

(ゴメン、ゴメンなさい、ご主人様……)

 ジンジンと胸が痛み、何故かツンと、鼻の奥が痛い―――



 事後、キースは共に虎徹を風呂に入れてくれたのだが、虎徹の【ホール】を洗うキースの姿が、何だか虚しく思えた。
 自分のカラダ、そのものが……。



 なんで俺は、人間として生まれてくることが赦されなかったのだろう。







 
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