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10/23 SPARK6新刊【兎虎/モブ虎小説】忘我の果て R18

10/23(日)SPARK6 の新刊情報ですwww

【忘我の果て】兎×虎/モブ×虎 R18/A5/P100/オフ/¥1000

*表紙*
bouga_hyoshi02.jpg
※諸事情により、表紙が差し替えとなりました。大変申し訳ございませんが、ご了承ください。

pixivにて、別ページのサンプル(モブ虎、兎虎R18部分)をアップしてあります。


▼サンプル (結構長いです;;;)





※作中より



*失踪【side BARNABY】*



 この日は、めずらしく【男子会】と言うべく、アントニオ、キース、イワンも含めて虎徹の家に飲みに来ていた。
 山間で大きな土砂崩れがあり、ヒーロー総出の大掛かりな救出作業になった。
 ジェイク事件後、競うような犯人逮捕などではなく、こういった協力し合っての作業を終えたその日の夜は、こんな風にみんなで集まって飲むことが増えるようになっていた。
 やはりあの事件は、ヒーロー達にとっての分岐点だったのだろう。その日を境に、ライバル意識だけではなく、仲間意識がみんなに強く生まれた感じだ。
 こういった【おつかれ会】の火付けは、大抵虎徹だったりするわけだが(この人は、飲みたいだけのような気もしてならないが……)、周りの視線を気にせずに楽しく飲みたいといって、こうして家飲みにする事が多い。
 虎徹自身、基本的には大人の飲み方をする人なので、普段は落ち着いて飲むし、アントニオと二人で飲むときはもっぱらバーに飲みに行くけれど、たまに壊れたように弾けてしまうこともあるのだ。
 キースが意外とザルで、天然爽やかのままガツガツ飲んだり飲ませたりするから、キースに捕まるとほぼ終了な感じだ。
 酔っ払って大きな声でヒーロー名を叫ぶのも、周囲の目が面倒である。
 そんなこんなでこの日は言い出しっぺの虎徹宅になったワケだが、約一名見当たらないのは……まァ女子会に参加しているとだけ言っておこう。
 帰りにスーパーで酒を買いあさり、時間も19時を回っていたから虎徹宅に着くなり早速飲みはスタートして。
 いきなりキースに捕まり、爽やかな笑顔で酒を注がれ、おろおろと戸惑っているイワンに、その姿を面白そうに傍観しているアントニオ。
 虎徹はただ今キッチンで軽食を調理中なので、特別することがないバーナビーは、虎徹を手伝おうとキッチンへ向かった。
「虎徹さん、手伝いますよ」
「ンだ? 気にしねェで飲んでて良いんだぞ?」
 チャキチャキと手を動かしながら、随分とツレナイことを言う。虎徹とすれば、気を使ってくれたんだろうが、バーナビーにとっては追い払われたような感じがして、些かつまらない。
「なんだか、みんなで盛り上がっているので……」
 あなたと一緒にいた方が楽しいから、こっちに来たんです。
 とは口が裂けても言えないので、当たり障りなく答えれば、
「おまえ……もうちょい、みんなとフレンドリーになった方が良いぞ? なんのためにこうしてみんな呼んでるのか、意味がなくなるじゃねェか」
「え……?」
 困った表情を浮かべながら突然予想外の言葉を言われ、バーナビーは思わず頓狂な声を漏らした。
 それは即ち……。
「おまえ、俺にはこうして懐いてくれるようになったけど、みんなとはまだまだ一線引いてるようなところがあるだろ? もっとみんなと仲良くした方が楽しいんじゃねェのかなって思って、こうしてみんなを呼んでんのに、おまえがその場を離れてしまったら意味がないの。わかる?」
「…………」
 虎徹は、自分がみんなと飲みたいからではなく、バーナビーのためにみんなを呼んでくれているようで……。
 バーナビーのことを考えて、バーナビーのためにわざわざこんなことを企画してくれているのかと思うと、堪らなく嬉しい気持ちがこみ上げる。
 でも……それでも……。

(僕は、いつだってあなたと二人きりになりたいんです……)

「あなたが飲み始めたら僕も飲み始めますから、気になさらないでください。誰かがこうして輪から外れて働いていると、気になって仕方がないんです」
 本心はもちろん告げず、バーナビーは虎徹が有無を言えないような言葉を返してやった。
「悪ぅございましたねェ。じゃあ、それ皿に盛り付けてくれるか? 俺も、ノド渇いてきた」
「了解です」
 折れそうにないバーナビーに観念した虎徹が仕事を一つ申し付けてきて、バーナビーは納得の笑みを浮かべながら早速作業に取りかかる。
 それは出来合い物を皿に乗せるだけの作業ではあったけれど、それでもバーナビーにとっては虎徹と一緒にいられる口実なので、嫌な思いなど一つもない。
 虎徹に指示された作業を一つ一つこなしていると、
「ぅわーんっ、タイガーさんっ。僕にもお手伝いさせてください!」
 泣きモードでイワンが乱入。
「ぉお? 今度は折紙か。どうした、涙目になって」
「スカイハイさんのペースが、今日は一段と早くて……この調子じゃ、僕30分も経たない内に潰れちゃいますよっ」
「ったく……あいつの場合、自覚がねェからな……スカイハイはアントニオに任せておけ。あいつもザルだ」
「虎徹さんは、結構スカイハイさんに呑まれますよね……」
「なにっ! 余計なお世話だっ!」
 アルコールにそれほど強くないイワンが、キースのペースで飲まされたら、イワンの言うとおり確実に潰されるだろう。
 飲み慣れている虎徹ですら、時折調子に乗って飲まされて潰されるときがあるほどなのだから。
 そんなことを踏まえての虎徹の言葉にバーナビーのダメ出しが入り、いつの間にか二人の言い合いが始まっていて。
「……本当に、いつの間にかタイガーさんとバーナビーさん、こんなに仲良くなってたんですね」
「はぁ? ンなことねェよ」
「は? そんなことないですよ」
「…………」
 この状態でユニゾンする時点で、気が合っている証拠だ。
 バーナビーも弾みであんな言い方をしたけれど、でも周りの目からそう言われるのは、やっぱり少し……嬉しい。
 そんな出だしでこの日の飲み会がスタートしたワケだが、余計なお世話で虎徹がキースをけしかけ、本日の標的となったバーナビーが、めずらしく潰れてしまい……。
「おいおい、平気か? バニーちゃん」
「……平気じゃ、ないかも……あなたの、せいですよ……」
「そこは否定できねェな。無礼講ってことで、許してくれ」
「なんですか、それ……」
 結構フラフラ状態になるまでキースに飲まされたバーナビーは、さすがにダウン宣言をし、虎徹に肩を担がれてロフトへと向かっていた。
 ベッドが置いてあり寝室にしている場所だが、虎徹は滅多にこの場所に他人をあげない。  
 実は、バーナビーも泊まるときはソファーで眠っているので、今日が初めてだったりするのだ。
「少し寝とけ。折紙も寝ちまったし、その内あいつ等も眠るだろ」
「……スミマセン。ベッドを占領してしまって……僕も、ソファーでよかったのに……」
「気にすんなって。具合悪くしてるヤツをその辺に放っておくほど、鬼ではねーよ」
 上着のライダースを脱ぎ、ベッドに寝かしつけられて、さすがに申し訳ない気持ちがこみ上げ素直に謝ったのだが、本当に気にしてないらしい虎徹は、口元に笑みを浮かべると、
「具合悪くなったら、呼べよ」
 とだけ言って、下に降りていってしまった。
「……優しいんだよな……」
 本当に、あの人は……。
 虎徹の後ろ姿を見送り、ぽつりと呟く。
 優しいのだ。虎徹は。優しくて、温かい。
 そう、誰にでも……。だから虎徹はみんなに慕われている。
 熱血だったり、お節介だったり、適当だったりで、始めは誰もが面倒くさい人だと思うだろうが、気付けばみんな虎徹のことを好きになっている。
 カリーナなど典型的で、バーナビーにとってライバルと言っていい存在だ。
 自分だけが特別だなんて、思ってはいけないのだろうか。
「……虎徹さん……」
 掛け布団の端を掻き抱くように包まる。
 寝具は、その人の匂いを強く残す。
 虎徹の匂いに包まれ、バーナビーは堪らない気持ちがこみ上げてきた。
 以前、バーナビーのベッドで眠ろうとした虎徹が、
『すげェ。バニーちゃんのニオイがする。バニーちゃんに、抱き締められてるみてェだ』
 と言っていた。その時はよくわからなかったけれど、言葉の意味がようやくわかった。初めて虎徹のベッドに入って……虎徹に包まれている錯覚に陥る。
 枕に顔を埋め、深く息を吸い込めば、下肢に覚えある疼きが芽生える。
「……虎徹さん……」
 下からは、まだ三人の声が聞こえてくる。時折、笑い声も。
 いけない、ダメだ、とわかっていても、バーナビーは強く疼く熱杭に手を伸ばしていて……。
「っ……ふっ……ぅっ……虎徹、さん……」
 虎徹の匂いに支配され、バーナビーは夢中になり、我を忘れて自慰に没頭した。
 くちくちと自身を慰めながら、虎徹の匂いを吸い込み、虎徹の名を小さく何度も呼んで……。
 いけないことをしている罪悪感も、バーナビーの興奮を必要以上に煽り立てていた。
 だから、バーナビーは気付かなかったのだ。
 背後に人が存在していただなんて……。
「くっ……ふっ……虎徹、さん……」
「バニー……?」
「――― !??」
 聞き慣れたその声に、バーナビーは飛び起きるように振り向いた。
「ぁ……こ、てつさん……っ」
 そこには、怪訝そうに眉間にシワを寄せ、無言で問いただすようなキツい視線を向けている、虎徹の姿が……。
「どう、して……っ」
 刹那の緊張で喉がカラカラに渇き、上手く発声できない。
「具合悪くしてねェかなって、様子を見に……えっと……おまえ……」
「あの……」
 上手く言葉が続かず動揺しているバーナビーに、虎徹の口から漏れ出る、確信的な言葉。
「諦めてたんじゃ、ねェのか……?」
「っ……」
 その言葉が、すべての終わりを告げているかのようで、バーナビーは目の前が真っ暗になっていくのを感じていた。
 黙ってしまうのは、虎徹に『そうです』と無言で認めているようなものだ。
 虎徹の目が、まるでバーナビーを哀れんでいるようで……。
 頭の中がグチャグチャになって、なにも考えられなくなる。
「おまえ、ずっと……」
「っ……ぼ、くは……」
 自分で何を言おうとしていたのか、まったくわかっていなかった。
 なにか、弁解でもしようと思っていたのか……虎徹を必死につなぎ止めようとしたのかもしれない。
 悪あがきだ。
 でも、それすらもバーナビーはさせてもらえなかった。
「おーい、虎徹。バーナビーは平気なのか?」
「っ!」
 アントニオの声が聞こえ、バーナビーはビクリと躰を弾ませる。
 虎徹はバーナビーに視線を送り、ロフトから顔を覗かせ、ボリュームを落とした声で答える。
「あァ、寝てるよ。でけェ声出すと折紙まで起きちまうだろ、牛牛マン」
「なんだ、その牛牛マンってのは!」
「だから、でけェ声出すなっつってんだろっ!」
 虎徹は、チラリとバーナビーに一瞥を送ると、そのまま何も言わずに降りて行ってしまった。
「……虎徹さん」
 絶望感がバーナビーを支配する。
 今まで築き上げてきたものが、一瞬で崩れ落ちた瞬間。
 もう、終わったと思った。
 なぜ、こんな愚かなことをしてしまったのだろう。
 いつ誰が様子を見にくるかもわからないのに、こんなバカなことをしてしまっただなんて……。
 今までコツコツと確実に積み重ねてきた虎徹との絆を、自らの手で断ち切ってしまっただなんて。
 虎徹は、自分を避けるかもしれない。
 これ以上自分が変な気を起こさないために、過ちを犯さないために、コンビを解消したいとロイズに頼むかもしれない。
 もう……虎徹と一緒にいられないかもしれない―――
 何もかも終わりだ。
「っ……虎徹さんっ」
 バーナビーは虎徹の布団を手繰り寄せ、再び顔を埋めた。
 もう二度と、こんなことは出来ない。
 いや……。
 そんなこと、どうだってイイ。
 この二十年間、一瞬でも感じることのなかったささやかな幸福を、自分の過ちでこんなにも簡単に失ってしまうのか……。
「ぅっ……ぅぅっ……虎徹さんっ」
 バーナビーは、咽び泣いた。
 いつまでも、いつまでも……涙は止まることなく泣き続け、朝を迎えた。
 虎徹の困った顔や、呆れた顔を間の当たりにする自信がなかったから、バーナビーはみんなが眠っている隙に家を出てしまおうと思った。
 しかし。



 同じ思いでいたのか……虎徹の姿が、部屋に見当たらなかった。



 そしてこの日、虎徹は失踪した。
 まるで、バーナビーから逃げるように―――




*失踪【side KOTETSU】*



 まさか、バーナビーのあんな姿を目撃するとは、夢にも思わなかった。
 たしかに、告白はされた。
 好きです、とまっすぐに。
 けれど、虎徹はちゃんと断った。バーナビーに対して、悪いがそういう気にはなれないと……。
 それからバーナビーは、一切そんな素振りを見せることがなかったので、虎徹は諦めてくれたのだと信じて疑わなかったのだ。
 だって、本当にそんな素振りを見せることがなかったから……だから虎徹は変に意識することもなく、バーナビーと仕事のパートナーとして上手く付き合うことが出来ていた。
 二人の力を合わせて事件を解決していく。それが虎徹には楽しくて仕方がなかった。
 なのに……。
 バーナビーは、諦めていなかった。
 ずっとずっと諦めずに、自分自身と戦っていたのだ。
 信じられなかった。
 けれど、それが当たり前なんじゃないだろうかと、今更ながらに思い直す。
 バーナビーはまだまだ若い。人生で初めて好きになったと自覚したその人を、そんなにすぐに諦められるのかといったら、諦められないのが普通だ。
 諦められるようなら、虎徹に対してそれまでの思いでしかなかったということ。
 あの時虎徹は、
『気の迷いかもしれない』
 という表現もしたけれど、バーナビーの気持ちは本物だったということだ。
 そもそも、バーナビーみたいな男が、そんな中途半端な感情を男などに向けるとは、到底思えない。
 バーナビーはずっとずっと、ひた隠しにしてきたのだ。
 自分が虎徹を好きで居続けていることがバレたら、虎徹が離れていってしまう。
 そんな風に思ったのだろう。
 ただ、ひたすら感情を押し殺して。
 それが若いバーナビーにとって、どんなに辛かったことだろうかと考えると……複雑な気持ちがこみ上げる。
 好き。
 そう思われて、嫌だと思う人間はいないと思う。よほどその人に、嫌悪を抱いていない限り。
 虎徹だって、正直に嬉しいと思う。
 思うけれど……自分はそれに応えるべきではないことだけは、わかっているから……。
 バーナビーに想われ、虎徹が断る度に彼を傷付ける。
 それが虎徹には辛いのだ。
 だから、諦めてくれていたのだと信じたかった。諦めていて欲しかった。
 でも、思い出す。
 バーナビーの家で飲んで、そのまま眠ってしまった時……。
 虎徹は、とても気持ちの良い夢を良く見ていた。
 カラダを優しく撫でられるような、フワフワと心地良くなる感じの夢を。
 軽く接吻け合うような、幸福感。
 それが最近、とてもリアルに感じたことがあった。
 下肢に覚えある熱を抱いたとき……まさに、手淫や口淫をされているような喜悦に、夢の中の虎徹は声をかみ殺すように、吐息を漏らしていた。
 そんな夢の中の自分の姿を客観的に見ている自分が、『あり得ないだろうこんな自分』と、いたたまれなさを感じていたのも覚えている。
 夢の中の虎徹は、自分の股間に顔を埋める人の髪の毛に指先を絡め、ヒコヒコと腰を動かしながら……だらしなく口元を緩め、至極キモチ良さそうに身を委ねていた。
 その自分の姿が、男が女に【させている】ような反応ではないように思えて……。
 でも、相手が誰なのかが全然わからない。
 わからないけれど、夢の中で虎徹はイキ果てた。
 ハァハァと射精の余韻に肩を揺らしながら、うっすらと目を開けると、何故かそこにはバーナビーがいて。
 バーナビーがこんなことをするハズがなにのに、なんだか都合の良い夢だと思うと共に、ほんわりと心が満たされる。
 思わず、
『……随分と、キモチイイ夢だな、バニーちゃん……』
 なんて呟いたら、
『夢だから、キモチイイんですよ、虎徹さん……』
 と、バーナビーのとても優しげな声が耳に届いて。
 なんだか、幸せな夢だなって思いながら、再び意識が薄れていったけれど……。
 目覚めたとき、なんだかひどくバーナビーに申し訳ない気持ちがこみ上げて、平然を取り繕うのが大変だった。
 もちろんバーナビーは、普段通りに虎徹と会話をしていた。けれど、まさかあれが現実だったとしたら……虎徹はまともにバーナビーの顔が見れないような気がして、アントニオとキースが眠ったことを確認して、家を出てしまった。
 近くのコンビニエンスストアで缶ビールを買い、公園に行ってブランコに座ってチビチビとビールを啜りながら、ずっと空を見上げていた。
 空を見上げながら、友恵のこと、楓のこと、自分が小さかった時のこと、レジェンドのこと、ワイルドタイガーのこと、そしてバーナビーと出会ってからのこと……色んなことを思い出していた。
 色んなことを思い出しても、見つかる答えはただ一つ。

 自分は、何があってもバーナビーに応えてやることはできない。
 それは、バーナビーのためにも―――

 一緒に居続けたら、おそらく自分はバーナビーを傷付け続ける存在になる。
 バーナビーが傷付き悲しむ姿なんて、もう見たくない。
 それはジェイク事件の時、痛烈に思い知らされた。
 感情の相違はあれど、バーナビーは虎徹にとって、至極大切な人だから。
 大切だからこそ……。

(距離を、置いた方が良いのか……)

 脳裏にそんなことを思い浮かべた時、スマートフォンが振動し、虎徹はひどく焦った。
 まさかバーナビーが起きて、虎徹がいないのを気にして着信を入れたのかと思いかなり焦ったのだが、表示された名前は【公衆電話】で。
 虎徹は、眉を潜めた。怪しすぎる電話。非通知では拒否されるとでも思ったのか……。
 けれど、例えば母の安寿や楓が、携帯が使えない状況で緊急にかけてきたら……。
 そう考えてしまったら、この電話がものすごく大切なもののような気がしてならなくなり、虎徹は考え込みながらも結局通話ボタンを押し、携帯を耳に押し当てた。

 それが、自分の身に降りかかる最悪の事件に繋がることも知らずに―――

「もしもし……」
 声が、警戒心で低くなる。
 少し間を要して聞こえてきた声は、音声を機械音に変えた、もちろん知らない者の声だった。
『……初めまして、ワイルドタイガー……』
「っ!??」
 その言葉に、虎徹の表情がひどく強張る。
 何故、鏑木虎徹の携帯が、ワイルドタイガーのものだとわかった……。
 明らかに怪しいその電話に、虎徹は動揺する。
 けれど、その動揺を悟られてはならない。
「誰だ、おまえ……」
 より一層低くなる声に、クツクツと聞こえてくる笑い声。
 音声は変えているが、なんとなく男だとわかった。
 そして男の口から告げられる、有り得ない名前……。
『ウロボロス……』
「――っ!??」
『もちろん、知ってる名前だよなァ。二ヶ月前、シュテルンビルトを壊滅寸前まで追いやった組織だ』
「おまえ……何モンだ……ウロボロスの人間なのか?」
 まさか、こんなところでその名前が出てくるとは思いもよらなかった。
 緊張し、背中がじっとりと汗ばむ。
 まだ、ウロボロスの残党が残っていたというのか……。
『イエース』
 虎徹の疑問を感じ取ったのか、まるで嘲笑うような、小馬鹿にしたような返事をする男。
 虎徹は、ギュッと携帯を強く握りしめた。
 真っ先に思い浮かんだのは、バーナビーの顔。
 ようやく両親の敵を伐ち、前向きに生きられるようになったバーナビーに、まだウロボロスの残党がいたなどと、悟られるワケにはいかない。
 バーナビーの苦しむ顔は、これ以上見たくない……。
「なんで、俺の番号がわかった……」
『ウロボロスの組織力を、舐めるなよ。ブロンズステージのハックなんて、造作もないんだよ。ゴールドステージはセキュリティーの効果でちょいと手間取るが、おまえの番号さえわかれば、問題はない。まァ、おまえがアホみたいに信じて、あの【ウサギのぬいぐるみ】をあいつの家に持ち込んでくれたおかげで、あいつの家も知ることができたがな』
「―――っ!! おまえ、バーナビーが狙いか……」
『あァ、そうだな。直接【恨み】を持っているのはあいつだ』
「っ……」
『でも? ……直接【用事】があるのは、おまえだよ』
「なに……?」
 狙いはバーナビーだと認めた上で、意外な言葉が男から飛び出し、虎徹は更に眉間にシワを寄せた。
 一体、どういう意味だ……。
『俺はな、ジェイクさんを、心の底から慕っていた。能力を2つ持つあの人は、ネクストの中のネクストだ。おまえらの言葉を借りれば、あの人こそが【キング・オブ・ネクスト】だ。あの人が、この腐った世の中を変えることのできる唯一の人だった……だのに……』
 男の声が豹変したのは、次の瞬間。
『てめェ等が、すべてをぶち壊した!! あの人が、負けるハズなんてねェのに……クリームまで、あんなになっちまって……ありえねェだろ……絶対ェに、おまえ等は許せねェ。特にあの男……ギッタギタに打ちのめしてやらなきゃ、気がすまねェんだよ!!』
 電話の向こうで、人が変わったように叫び散らす男を、虎徹はどこか哀れんでいた。
 こいつも、クリームと同じ……。
 理想郷は完全ではない。一つの理念を抱くことは、時として素晴らしいことかもしれないが、その一角が崩れれば、あまりに脆く崩れ去ってしまう。
 こいつ等のように……。
「……どんなネクストの能力も、完全じゃない。必ず弱点が存在する。それを、俺たちが見破っただけだ」
『っ……』
 低く言い紡がれた虎徹の言葉に、男が一瞬言葉を失う。
 けれど、逆に開き直った男が言葉を続ける。
『クククッ。でも俺は、完璧な計画を思いついたぜ?』
「なに……?」
『テレビ見てみろよ』
「今、出先だから見れねェんだよ」
『何だよ、つまんねェヤツだな。まァ、ヒーローならすぐ連絡いくだろ。昨日な……あいつのマンションと周辺の数ヶ所に、爆弾を仕込んでおいた』
「―――っ!」
 その言葉に、瞬間的に脳裏によぎったのは、あのフォートレスタワービル爆弾事件。
 あの時、バーナビーは犯人をウロボロスと呼んでいた。
 その経験があるからこそ、男の言葉はリアル過ぎて、虎徹は言葉を返すことが出来なくなってしまった。
 でも、バーナビーの家をどうやって調べ上げた? ハッタリだろ? と思った直後、先ほど男が話していた【ウサギのぬいぐるみ】の話を思い出し、あれに発信機が付いていたら……と思ったら、瞬間的に虎徹の額に冷や汗が浮かび上がった。
『クククッ、覚えているだろ? C9の威力……周りには小規模爆弾を仕掛けてあるが、あのマンションにはあの時と同じ規模のC9を仕掛けておいた。それが、どういうことだかわかるよな』
「っ……」
 あんな規模のC9を爆破させたら、確実にあのマンションは崩れ去る。
 この男が言っていることはすべてハッタリのガセネタだという可能性だって、ゼロではない。
 ただウロボロスの人間ならば、それをやることを厭わないだろう。
 建設されたばかりのフォートレスタワービルに、C9を設置したくらいである。
 探りを入れてみようかと考えたが、下手に刺激を与えて爆破させられたら、最悪だ。
 どう対応すべきか、焦る頭では思い浮かばず、虎徹は黙り込んでしまった。
 携帯を握り締める手の平と額に、あからさまな汗が浮かび上がる。
 緊張で喉が乾き上がり、生唾さえ飲み込めない。
 しかし、その虎徹の【無反応】が、男の痺れを切らせてしまった。
『おまえ、俺の言ってることがハッタリだって思ってんの?』
「っ!! 思っちゃいねェよ!」
『まァ、いい。コレはデモンストレーションだ』
 男が声のトーンを上げてそう言った数秒後、

 ドーンッ!!

「―――っ!!」
 携帯越しに聞こえた爆発音に、虎徹は咄嗟に立ち上がり思わず周囲を見渡した。
 もちろん、ココからは何も見えない。
 しかしさほどの時間も要さずに、PDAがビーッ、ビーッと警報をならす。
 虎徹は、ボイスオンリーで回線を繋げた。
『ボンジュール、ヒーロー。シュテルンメダイユ地区ゴールドステージの商業ビルで、爆発事故発生。ヒーロー達は直ちに現場に向かってちょうだい』
「っ……」
 アニエスの言っていた地区は、やはりバーナビーの住んでいる地区だった。
 この男は、本気だ。
 虎徹は一言も答えないまますぐにPDAを切り、これ以上にない低い声で男に問うた。
「要件は、なんだ……」
『物分かりが良いヤツだなァ。多分、あいつじゃそうはいかねェんだろ?』
「……それは、俺の答えることじゃねェよ」
『……クククッ、まァいい。おまえ一人で来い。言っただろ? 俺の直接的な目的は、おまえだって。誰にも言うなよ。もちろんあいつにもだ。ヒーロースーツは着てくるなよ。目立って仕方ねェし、場所もわかっちまうんだろ? そのPDAも外してこい。わかったな』
「条件がある」
『なんだ?』
「俺が行ったらまず、爆弾を全部外させろ。それが条件だ。俺たちはイイが、市民を巻き込むのだけはヤメロ」
『おまえが、ちゃんと言うこと聞けばな』
「……どこに行けばイイ―――」



 バーナビーのためだった。
 また、虎徹の早とちりでバーナビーに迷惑を掛けてしまう。
 バーナビーは、自分に届く荷物を警戒していた。自分の家に持ち込もうだなんて、これっぽっちも思っていなかった。
 それを、女の子からのプレゼントと勘違いして、勝手にバーナビーの家に持ち込んでしまった。
 恐らく、高性能チップが埋め込まれていたのだろう。
 そのせいで、バーナビーの所在地が敵にバレてしまった。
 すべて、軽はずみな行動を取ってしまった、自分の責任なのだ。
 だから、バーナビーにもみんなにも、迷惑を掛けずに一人で解決しようと虎徹は思ったのだ。



 虎徹は、一人無防備なまま敵のもとにへと向かった。





*続きは本誌で・・・*


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